第六話【奇跡の価値は】



校舎中を探した。いつまでも探した。見つけても喋る言葉など考えていなかった。
それでも探した。いつまでもいつまでも探した。
職員室に何度も足を運んだ。しかし職員室もどうしたの?どういうこと?と言ったカンジだった。

ふと我に返り、腕時計を見る。1時間と少ししか経っていなかった。最後の授業中である。しかし教室に戻る気も湧かず、フケようと思った。
冷静になると、恐らく呼び出しを食らうであろうことに気づき、学校に残ることにした。しかし授業に出る気はない。
しかたなく屋上へ向かった。俺は屋上からみる景色が大好きだった。
自然のものなんて結局は何一つとしてない。あの山も、河も人間の手に汚されている。
それでもその景色が好きだった。夕焼けも綺麗だった。しかしまだそんな時間ではない。煙草でも吸って心を落ち着けよう。

屋上へ向かう途中気づいたことがあった。「そういえば屋上にまだいってなかったな。」
まあ、そんな上手いこといくはずもなく、屋上にはだれもいなかった。
残念そうな笑顔をみせた彼は、「俺はサボりに来たんだからそうでないと困る。」と心の中で強がっていた。

「TM君・・・・?」



奇跡価値    THE ANOTHER  STORY OF TM                 
                               EP  6                 
 第六話                      Hedgehog's Dilemma


その声は確かに聞こえた。ハッと辺りを見回すと、そこに立っていたのは詩織だった。
「あ・・・あの・・・・先生!ごめん!わざとじゃないんだ!」とっさに出た言葉はそれだった。謝罪の言葉。

「ふふwわかってるわよwただ・・・・びっくりして飛び出したはイイけど・・・戻るに戻れなくなっちゃって。」

俺は安心した。嫌われたわけでは恐らくない・・・・と思う。詩織の明るい笑顔を見るとそう思わせてくれる。
それから俺と詩織は他愛ない話をした。尊敬する先生の話。バイクの話。

詩織には、尊敬する先生がいるらしい。詳しいことは、恥ずかしいからとか言って話してくれなかった。
でもそんなことでも楽しかった。心から楽しかった。好きな人と話をすることが楽しいことって初めて思えた。
1時間ほど話しただろうか、

「♪キーンコーンカーンコーン、3年B組TM君。至急職員室まで来てください」
「やっぱ、呼ばれたか・・・詩織先生は?」
「私は電話したから・・・帰りますって。」
「そっか・・・じゃあ行ってきますw」
「行ってらっしゃいw」

こってり搾られた。。。もう6時半だし・・・今回の事件で良くも悪くも詩織先生と近づけた気がする。
近寄りづらい雰囲気は消えはしなかった。でも俺は他のヤツらよりは距離が近いだろうと勝手に思い込んでいる自分がいる。
それでも良かった。それだけで心が楽になった。でもいつまでもこんな関係のまま続けていくわけにはいかない。
そう思っていた。


少しづつ近づいていく二人。 二人の気持ちは向かい合えるのか。
教師と生徒、その関係に躊躇する詩織。この心の壁を取り除くものはあるのか。

 

                  次回!            男の戦い